TOP WATER JUNKY
LIBERAL ANGLERS SP Orange Wing
ドロップラット、二度目の放散。
まるでハーメルンの笛吹き男のように大量のネズミを水面に誘うトップウォータージャンキー。
しかし、その大群は溺死はしない。軽快に活き活きと泳ぐ。
が、行く末はガボッという音と共に次々に水中へと引き込まれてゆく。
後日、街から消えた子供達は、ただただバス釣りに夢中になって戻らなかっただけ。
かなりの屈折具合だが、あのグリム童話と混同させてしまいたくなるほど魅力あふれるバスプラグ。
妄想癖はトップウォータープラッガーの性。
ラパラに始まり、バグリーにコーデルに…数多の実績。
それらの名高いメーカーが生み出した名作と呼ばれるプラグ、その多くがバルサ製だという事実。
加工の手間や素材の強度などバルサ材には何かとデメリットがあるが、それでも古くからブランク素材にバルサ材が使われ続けている。
これはもう一つの結論といえる。
だが、なぜかサーフェイスプラグには昔からあまり使用されることが少ない。
それはバルサのもつ最大の特性である浮力の強さが水面には馴染みにくいことや、ミノーやクランクベイトとはアクションの本質がまるっきり違うからだと想像はつく。
とはいえバルサプラグに強いこだわりを見せるトップウォーターブランドも少なからずは存在する。
その特性を制御する為に多くの手間と工夫を凝らし好適なサーフェイスプラグを生み出してきた。
かのバルサ50は、50もの工程をもって完成することから、そう名付けられた。
つまりはバルサ材でも比重をコントロールすれば、とても特徴的で理想のトップウォータープラグを生み出すことができるということ。
そんなバルサ材を使ってTWJがシングルスイッシャーを製作。
名はDROP RAT。
狙い所が明確でその的を針で刺すようなアクション。
楕円形のズングリボディを3箇所に埋め込まれたウェイトで安定させ、見た目の鈍重なイメージを覆すようなキャストフィーリングと軽快なスイミングで水面を這う。
さらにバルサ製プラグでは殆ど見ることがないクラシカルな三層アイと1950年代のデッドストックのマスタッドフックの採用で醸し出される生命感と貫禄。
どれほどの細工を必要としたのかを上手く聞き出したところ、差し当たりバルサ70というとこか(笑)
全くもって非の打ち所なし。
イタチやヘビ、またはトンビなどに追われて水面に落ちたネズミ。実は泳ぎが上手いネズミ 。
だが難敵は地上だけではない。水中からも大きな口を広げ奴が襲っている。
警戒しつつ軽快に逃げる。
そんなストーリーで弱肉強食の野生を垣間見る。または擬似体験を試みる。
バスプラグの妙味。
それは、どれだけ刺激的でエキサイティングなシーンを演出できるか。
もしくは、どれだけ興奮と期待、そして想像を掻き立ててくれるか。
さらには限りなく不自然でありつつ、それでいてどれだけ自然に深く溶け込んでくれるか。
ドロップラットは極上の野生考察ツールだ。